<太幹素材も得られる取り木>
取り木は挿し木と同じように素材作りでよく使われ、挿し木では得られない太幹の素材を得られたり、樹のいいとこ取りができたりする技法です。樹の養分の通り道を遮断し、その部分から発根させるやり方です。養分の通り道がせき止められるとカルスという組織を形成して部分的に膨らみ、そこに一定の湿度を与えると根を出すという性質を利用したものです。
・時期
春から梅雨ごろにかけて仕掛けるのが一般的です。この時期に仕掛ければ1か月~3か月で発根して切り離すのが夏から秋ごろになります。夏以降に仕掛けると発根してすぐに冬を迎えるので新しい根が生長する期間が短くなるので注意してください。また、梅雨時期は雨が多いため取り木部分の湿度を一定に保てるという利点があり、乾燥させてしまう心配も少なくなります。
・樹種によって発根までの期間が違う
モミジなど発根しやすい樹種では早くて3週間ほどで発根が見られます。しかし、黒松や五葉松など発根しにくい樹種では半年から1年ほどかかる場合があります。取り木の難しい樹種では気長に待つことも必要になってきます。
・方法
盆栽では主に環状剝皮法と針金結束法が使われます。
環状剝皮法ー幹の一部の皮を剥いで発根させる方法。取り木したい部分のすぐ下の皮を一周剥ぎ、ミズゴケ等で保湿しておけば発根します。
③ミズゴケで周囲を保護し、ビニルを巻いておきます。④一ヶ月ほどで発根が見られます(ビニル内部の白い線が新しい根)。
⑤切り離し。ミズゴケが取れない場合はそのままでもよい。⑥根が充実していないので鉢上げするときにヒモで縛っておくと安定します。
針金結束法ー皮を剥ぐ環状剝皮とは違い、取り木したい部分に針金を巻いて養分の通り道を遮断する方法です。環状剝皮で発根しにくい樹種で使用されます。結束には1.5㎜~2㎜ほどのアルミ線を使い、幹回りに2~3周巻いて端をねじって固く結束しておきます。あとは同じようにミズゴケで周囲を保護してビニルを巻いておきます。
ーそのほかの方法ー
枝伏せ法ー地植えされている庭木などで使用される方法です。地表近くの枝を地中に埋めて発根させます。地面付近に枝があることが前提なので株立ち状に育つ樹種で行われます。
根接ぎ高取り法ー接ぎ木を利用した方法です。取り木したいところに若木の根元部分を数本接ぎ、活着してから接いだ数本の木ごと切り離します。