<実生はロマン>
・種から育てる=実生(みしょう)
種から育てることを「実生」と言います。花が咲いて実が成る木は全て実生できます。盆栽に仕立てられている樹々の多くは元をたどれば一粒の種です。そこから芽が出て、葉が出て、幹ができる。植物が生まれるところを見られるのは実生ならではの楽しみです。
・実生できないものもある
実が成っても品種によっては実生で再現できないものがあります。例えばモミジは品種の多い樹ですが、それら品種の種を播いても先祖返りが起こることがあります。園芸品種の多くは実生の突然変異で生まれたのですが、その品種の種を播いても同じ品種の出現率は低く、先祖返りして原種のヤマモミジが発芽する場合があります。こうした品種の多くは挿し木も難しいため、繁殖は接ぎ木によって行われています。五葉松でも同様のことが起こり、例えば宮島五葉松(銀八房)という品種の種を播いても宮島五葉松は生まれず、普通種の五葉松が生まれます。よって宮島五葉松も接ぎ木による繁殖が行われています。
・種の入手
公園や野山で種を採取することができます。公園や神社に多く見られるモミジや街路樹のケヤキやサルスベリ、カエデ、ツバキ、海岸沿いの黒松など身近なところでも探してみると種が取れる樹種があるものです。時期は10月~11月頃が適期です。最近ではネットで種を販売しているお店があるので、そちらから購入しても良いでしょう。
・播種は秋または翌春
種を播くことを播種(はしゅ)と言います。播種の時期は秋と翌年の春です。採取した種をそのまま秋に播くことを取り播きと言います。取り播きは1か月ほどして芽が出ますが、すぐに冬になるため寒い時期は発泡スチロールなどの箱に入れるか室内に取り込むなどして越冬するための保護が必要になります。
春に播く場合は、種を翌年まで保管しなければなりません。保管場所は冷蔵庫など一定の低温が保たれる場所が望ましいです。春に発芽させるには冬を経験させることが重要で、そのために冷蔵庫などで低温保管します。果肉の付いていないものはビニル袋等に入れておけば大丈夫です。湿気を保とうとしてミズゴケなどを一緒に入れてしまうと発根することもあるので注意してください。ウメモドキなどの果肉の付いているものは種を取り出し、湿らせた砂に入れてから冷蔵庫で保管すると良いでしょう。春の播種は3月~4月が適期です。