<針金掛けは無理せずに>
針金掛けは盆栽独特の技術です。幹模様を作ったり、枝先を整えたりと様々な場面で使われます。針金で曲げることを「曲付け(きょくづけ)」、枝先の形を整えることを「整枝(せいし)」と言います。しかし、曲げられるからと言って無理をしてしまえば樹が弱ってしまうことにもなります。まず樹が元気な状態であることが前提です。そして曲付けは樹の特徴を生かすようにつけていきましょう。不自然な曲がりのまま樹が太ってしまえば修正が効かなくなります。あくまでその樹を良くすためのお手伝いです。
・針金
針金は銅線とアルミ線があります。
ー銅線は昔から使われているもので、盆栽園に置いてある樹々を見ると銅線が巻いてあるものをよく見かけます。同じ1㎜の太さであってもアルミ線より効きがよく、また一度巻くと硬化してなかなかもとに戻らない性質があります。しかし、硬い分太くなると取り扱いが難しく、力の弱い方は大変かもしれません。太さごとに番号が付けられており盆栽に使用されるのは細いものは#22から太いもので#8くらいまで。小品盆栽であれば#22から#14くらいでしょうか。外す時は元に戻らないので一巻きずつ切って外していきます。
ーアルミ線は銅線よりも柔らかく力の弱い方でも取り扱いが楽です。その分、少し太いものを使わないと効かない場合があります。巻いた後に硬化することもなく、外す時も巻き戻して外すことが出来ます。小品盆栽で使用するのは1㎜~2.5㎜くらいです。
*カラーも使用できます。アルミ線より硬く、頻繁に使う太さは1㎜~2㎜くらいです。
・時期
冬に針金をかけて、春以降に曲が付いてから外すのが一般的です。雑木類は新しく吹いた新梢に掛けることもありますから春から夏にかけてもできます。松柏類は暖かい時期に無理にかけてしまうと弱ることもあるので通常は冬に行います。
・食い込みすぎる前に外す
針金を掛けた幹や枝が曲がったまま固まるのは、樹が太って曲がられた状態で細胞が固まるからです。したがって樹が太らなければ思うような曲付けは出来ません。樹が太ってくるとその分針金が食い込んでいきますから、飲み込まれる前に外しましょう(その仕組みを利用したのが”ネジ幹”です)。モミジやカエデなどは早くて3週間ほどが目安(生長期)。雑木類は枝の太りが早いですから注意して観察してください。針金が太さの1/3から半分ほど食い込んでいれば曲が付いてますので外しても大丈夫です。一方、黒松や五葉松などの松柏類は半年から1年くらいを目安にしてください。とくに五葉松は少し食い込んでいても曲が戻ってしまうことがあります。その場合には冬に再度かけなおしてください。
・針金掛けの上達は練習あるのみ…
モミジを例に見てみましょう。
枝は二又(偶数)に分けられています。針金を掛ける前に枝先を整理しておきましょう。針金は下から上、幹部分から枝先という順番で行います。赤い矢印の二本の枝に掛けたいので長めに針金を用意します。1.5倍ほどの長さで良いでしょう。
丸印を起点に巻いていきます。斜め45度くらいの角度をキープして片方の手(左手)で抑えながら進みます。枝先へ進むごとに抑える手も前に進めましょう。枝分かれに来たら、分岐している片方に一巻きしておきます。
赤線の部分に巻き終えました。今度は青線の小枝に巻いていきます。途中の小枝は太枝に二巻きしてから小枝に行くようにします。
(順番に)(隣の太枝を起点にする)
全ての枝に巻き終えたら曲付けです。右流れの特徴を活かして柔らかく曲げていきます。頭や主要な枝はなるべく正面に向くようにします。扁平な枝ぶりではなく正面へ向けることで奥行と立体感が出せます。
(曲付け)(主要な枝は正面に向ける)
冬に掛けた針金は春までかけたままでも良いですが、春先から樹が生長期を迎えたら食い込み過ぎないよう注意してください。